sanyomomotaro2008-06-10

『蛍の歌』 復刊記念

 たぶん、30代以上では覚えておられる方もおられると思うのですが、昔、小学校の図書館に、「蛍の歌」という学研のノンフィクション児童書が必ず配架されていました。
 これは、徳島県の山間部にある小学校の分校を舞台に、小学校教員と子どもたちが、蛍について研究をしていくうち、その素晴らしい価値に気づき、ついには行政や国を動かしてまで蛍保護を推し進めるきっかけを作るまでになり、同時に、とりえがないと自分で勝手に思いこんでいた山奥の小学生たちが、どんどん自信を付けていく、という感動的な実話を記録したものです。
 この本の著者であり、作品のモデルの小学校教員でもある人が、実は、おかやま山陽高校の学園長先生の実の兄なのです。
 お名前を原田一美先生と言い、本書以外にも坂東捕虜収容所でのドイツ人捕虜と地元の人々の交流を描いた「ドイツさん物語」や、丁稚が猛勉強して鮎の専門家になる「博士になった丁稚どん」など、徳島に関係するテーマに基づき、児童向けノンフィクションを何冊も著しておられます。
 「蛍の歌」は1971年に学研から発行され、全国で30万部以上売れるベストセラーとなったのですが、1999年、惜しまれつつも絶版となっていました。
 その「蛍の歌」が、このたびリメイク版として、未知谷社から再発刊されました。この再発刊は、当時の教え子たち(現在は50代)が出版社に働きかけてご理解をいただき、実現したものです。
 その再発刊を記念して、作品の舞台である徳島県美郷市に、やはり教え子たちが協力して、「蛍の歌記念碑」を建立されることとなり、先週末、その除幕式にお邪魔しました。
 石碑には「蛍の歌」の表紙写真をカラーの陶板にしたもの(大塚美術館と同じ技術だそうです)に加え、当時、いっしょに研究した生徒たちの氏名が全員分、掲げられていました。
 その前夜、美郷市を流れる川田川の蛍を見に行きました。
 一美先生(私からすれば昔も今も「川田のおっちゃん」ですが)のご案内で、午後8時に『一斉点滅』が始まる、ということで、早めに宿を出て、現地入りしました。
 現地ではちょうど『美郷ほたるまつり』の真っ最中で、すごい人出です。
 しかし、さすが天然記念物に指定(これも「蛍の歌」がきっかけだそうです)されているだけありますね。車のライトや、人々の喧騒をものともせず、河川敷の草むらで、ものすごい数の蛍が、一斉に明滅しています。その数、何千、何万でしょうか。
 いろいろなところで蛍を見ましたが、やはり、ここは別格です。
 確かに午後8時ちょうどに始まった一斉点滅の後、今度は約半数の蛍が、ふわーっと上空に舞い上がります。これがオスで、メスを誘うために飛び回るのです。
 ほんとうに不思議で、幻想的な光景でした。
 川田川の蛍は、大雨さえなければ、もうしばらくは見られそうです(ただし、今年は気温が高く、例年より蛍の出は早めだそうです)。
 現地に行かれた際には、ぜひ「蛍の歌記念碑」もご覧下さい。美郷ほたる館(http://tokushima.travel.coocan.jp/yoshinogawa/yoshinogawa10003.htm)のすぐ下手にあります。
 そういえば、おかやま山陽高校のある鴨方も、実は蛍の名所なんですよ。山陽本線はさんで旧鴨方には杉谷川を中心に源氏蛍が、旧六条院には生石川(おんじがわ)を中心に平家蛍が、うまく住み分けています。
 今夜あたり、杉谷川に行ってみようかな。

蛍の歌(未知谷社刊)
http://www.michitani.com/books/ISBN978-4-89642-210-8.html