sanyomomotaro2007-09-12

モンゴルポレポレ紀行2007夏 


その2 「モンゴルの食事 後編」


 モンゴルで食べた美味しいもの、というか、面白いものに、モンゴリアンバーベキューというのがあります。
 要はバイキング形式で食材とソースを選んで、丸く大きな鉄板で焼いてもらう、肉野菜炒めです。
 では、これのどこが面白いかというと、焼くときに料理人さんたちがいろいろなパフォーマンスを見せてくれるんです。
 長さ60cmくらいの、断面が半円状にへこんだ二本のへらを使って炒めるのですが、この半円状のくぼみに食材(たとえばマカロニ)を乗せ、放り投げて皿で受け取ったり、時には口でぱくっと食べてしまったり、工夫を凝らして待っているお客を楽しませてくれます。
 ギャラリーは、すごいパフォーマンスが出ると、カウンターに備えてあるポットに、チップを入れます。すると、料理人さんもいっそうヒートアップするというわけです。
 このモンゴリアンバーベキュー、いわゆるモンゴルの伝統食ではありません。たぶん、料理屋さんのプロデュースをするコンサルタントのような人が考えたものでしょう。もしかすると、ジンギスカンと同じ、逆輸入モンゴル料理なのかもしれません。東南アジアにこのレストランがあるそうですから。
 でも、そういう事情は関係なく、とにかく見てて楽しい。これがいいんです。
 修学旅行では、ぜひ生徒に見せてやりたいと思いました。
 それから、司馬遼太郎氏の本によると、草原の民であるモンゴル人は古来、耕地・耕作を嫌ってきたのだそうです。
 しかし、実際にはモンゴルでも小麦や米を食べます。中国に支配されていた時代、小麦粉を使った餃子や饅頭などのいわゆる中華料理が導入されたようで、いまでもそれらがモンゴルの伝統食のひとつとなっています。
 モンゴルにも畑はあるそうですが、収穫量は微々たる物です。だから、これらの穀類のほとんどは、輸入に頼っています。輸入元は主に中国です。
 蒸し餃子や、いわゆる刀麺のような小麦粉の麺を炒めたモンゴル風焼きそば(焼きうどん?)などは、なかなかうまいです。
 ただし、具は、当然、羊です。メェーッ!
 全般的に、モンゴルの料理は、素材の味を生かした、素朴なメニューが多いです。ただ、素材、とくにお肉がすばらしく美味しいので、料理自体も魅力的です。
 でも、言い方を変えれば、いくぶん単調でもあります。これをもっとも強く感じたのが、帰りに寄った韓国の、プルコギ屋さんでした。
 プルコギは、真ん中が盛り上がった鉄板で、肉と野菜を焼き、コチュジャンとニンニクをのせてサンチュで巻いて食します。食欲を喚起する調味料と香辛料が混沌となった味覚の祭典。香りを嗅いだだけで、胃袋が、早く食わせろ!と騒ぎます。
 それに対し、モンゴル料理の味付けは塩味が基本です。
 ただ、このモンゴルの塩は只者ではありません。
 かの有名な、モンゴルの岩塩です。
 モンゴルの岩塩は、モンゴル北部にあるオブス湖周辺で採れます。
 このあたりは、太古には海だったようです。それが、長い年月をかけて地盤が徐々に隆起し、海にあった塩分が、これまた豊富にあったミネラルと一緒に結晶化したものです。
 だから、日本の専売公社謹製の高純度塩化ナトリウムと違い、太古の海の恵みがそのまんま閉じ込められているのです。
 一説には血圧抑制、健胃腸、肌荒れ治療などの薬効があるのだとか。
 薬効はともかく、味は最高です。
 塩なのに、なんというか、甘いんです。
 市場では、お土産ものとして、この岩塩をお皿上にくりぬいたものが売られています。焼肉やお刺身をこのお皿に乗せて食べると、岩塩の味がほどよく移るというものです。
 岩塩のかたまりをよく見ると、随所にほぼ完全に透明な結晶が混じっています。これらの結晶は純度が高く、高密度で、口に含んでもなかなか溶けません。そして、味は強烈です。
 まさに数億年の歴史を感じさせる、地球の恵みの味です。
 モンゴルの料理の妙は、結局、この岩塩の味に尽きるようです。

*写真はモンゴリアンバーベキュー