sanyomomotaro2007-09-11

モンゴルポレポレ紀行2007夏

その2 「モンゴルの食事 前編」


 モンゴルは、なんといっても、お肉が美味しい国です。
 そりゃそうです。家畜たちは広々とした大草原で、太陽の下で自由に放牧され、健康な天然の牧草だけを食べて暮らしてるんですから。
 モンゴルの肉といえば、やはり羊に尽きます。メェーッ!です。
 自分で勝手に「モンゴルにまで来て羊以外の肉を食ったらルール違反だ」などと思い込み、ほかの選択肢があるときにも羊を食べてました。
 その結果、2日目にはもう、体中から羊のにおいがするようになってました。
 汗をかいても、羊くさい。
 オシッコをしても、羊くさい。
 ウン(以下略。
 キャンプでは、今回のツアーを企画してくださった旅行会社のA社長さんのはからいで、モンゴル式の羊のさばき方を実演していただきました。
 男性二人が羊を連れてきて、一人が地面に押さえつけます。
 もう一人が小さなスイスアーミーナイフを取り出します。刃渡りは6、7cm程度でしょうか。これで、羊のお腹に「プツッ」と小さな穴を開けます。
 次に、そこから手を突っ込み、大動脈を探り当て、絞めます。2分もしないうちに羊は動かなくなります。
 見事な手際です。ここまで血はまったく出ません。
 この後、腹側からナイフを入れ、まさにジャケットを脱がせるように、毛皮をはぎます。腹と手足の内側に切れ目を入れる以外は、握りこぶしを皮と身の間に押し込んで、手ではがします。ここでも、まったく血は出ません。
 はがし終えると、皮が地面の上で敷布のように広がっていて、一枚皮のムートンのまな板の上に、身が載っている、という感じです。
 ここで腹を割き、内臓を取り出します。内臓を取り終わると、腹腔内に残った血をバケツに採ります。この時、初めて血を見ました。
 最後に、上半身と下半身を二分し、終了です。
 正直なところ、見る前は、もっと血だらけの、強烈な光景を想像していました。
 しかし、実際には、作業は淡々と、手際よく進みました。刃物も、小さなスイスアーミーナイフ一本です。このナイフ、おそらく、世界中で売られたアーミーナイフの中で、もっとも活躍しているうちの一本でしょう。
 まるで、腕のいい板前さんの、生け作りを見ているようでした。解体が終わった後の地面には、血の跡すら残っていません。
 で、この羊がその日の夕食に出たわけです。
 いわゆる、ホルホグ。羊肉を焼けた石と一緒に鍋に入れ、蒸し焼きにしたもので、モンゴルで最高のご馳走です。
 蒸すのに使った石で手を温めてからいただくのが、モンゴル流だそうです。
 これが、んまい。うまい、ではなく、んまい。落としてすぐなのに、うまみが濃厚です。ただ、羊の香りはとても強いです。それから、脂が強い。ふた切れまでいただきましたが、それ以上はちょっと無理でした。
 ところで、A社長によると、遊牧民の彼らは、この羊の解体を観光客に見せるのを、ほんとうはあまり好まないそうなのです。彼らにとって、羊を落とすのは、本来、冬の仕事なんだそうです。
 落とした羊は、住居であるゲルの天井の骨組みにつるし、いわゆる干し肉にして、冬の間の保存食にするのです。
 しかし、我々観光客がモンゴルを訪れるのは、夏です。
 ですから、彼らにしてみれば、何を好き好んで、本来は冬の仕事を夏にやらなければならないんだ、という気持ちがあるんだそうです。
 でも、おかげで、その夜いただいたホルホグが、一味もふた味も、味が深くなったことは間違いありません。
 それから、牛も、んまい。いわゆる霜降とは程遠い、赤身系の牛肉です。煮込みでいただきましたが、肉の繊維がしっかりしていて、噛めば噛むほど味が出ます。
 アメリカでステーキを食べに行った時にも感じましたが、やはり、肉はある程度歯ごたえがあった方が美味いですね。
 モンゴルでステーキハウスや焼肉屋を開くのもいいかもしれません。

【この章、続きます】