sanyomomotaro2006-11-20

おかげさまで、おかやま山陽高校調理科のクリスマスチキンは、大好評のうちに予約完売となりました。ありがとうございました。なお、チキンのお渡しは12月24日です。



モンゴル紀行 〜やつらの足音のバラード〜 ④


 テレルジでは、なにより、ゲルがモンゴルの気候風土に非常に適した建物であることを実感できた。アレルギー持ちの身として衛生面が心配だったが、まったくの杞憂だった。実に快適で、天井に開いた穴から気持ちよい空気が入り、中で寝転ぶとすぐ眠くなる。夕方以降はかなり冷え込むが、定期的にストーブに火を入れに来てくれる。
 今回お世話になったヒロタツーリストキャンプは、日本人がオーナーの観光用のゲルキャンプ。30棟ほどのお互いに2mほどの間隔で建てられ、別棟(鉄筋2階建て)にレストランとシャワー設備がある。また、エリア内に簡素なテニスコート、バスケットコート、バレーコートがある。
 食事はモンゴル食をアレンジしたもの。サラダやスープもつき、まったく問題はない。ここで食べたモンゴル風焼きそばは、羊の風味が強く、モンゴルの味として印象に残っている。
 ただし、モンゴルはこのキャンプに限らず、ハエが多い。が、これも大して不潔な感じはせず、すぐに気にならなくなる。
 モンゴルと言えば、やはり、星空である。藤井旭さんの星の本で育った世代としては、モンゴルで星を見なければ、何をしに行ったのかわからないくらい。
 ところで、モンゴルの8月はサマータイムの関係で日本と全く時差がない。そのため、午後9時ごろになってやっとあたりが暗くなる。もちろん、その分、夜が明けるのも遅い。
 なので、星を見るのは深夜をまわる頃から午前5時くらいまでが適している。
 深夜0時ころにゾラ―さんが起こしに来てくれ、ゲルを出てみた。空は薄い雲に覆われ、鴨方での星と余り差がなかった。なので、再び寝る。ゲルの中は、生気を吸い取られるように眠くなるので、普段は寝つきが悪い自分でも、目を瞑るとすぐに眠れる。
 次に目覚めたのが午前4時半。このときは地平線間際を除いて、見事な星空だった。ツアコン氏を起こし、しばらく星を楽しむ。
 モンゴルの星には『いまにも降ってきそうな』という表現はふさわしくない。たとえば、日本では、大気中の湿度などの影響で、明るい星は滲んで大きく見える。ところが、ここモンゴルでは、大気の透明度が高く、空気の揺らぎが少ないため、明るい星でも小さく見える。そのため、星は天に張り付いたように、あるいは、針の先で穴をあけたように、見える。明るい星は小さいまま、強く輝く。
 翌日は乗馬を体験した。キャンプの隣に、遊牧民のサイトがあり、ここで乗馬をさせてくれる。
モンゴルの乗馬は、日本の○○高原のファミリー牧場で400mトラックほどを一周して『はい、2,000円!』などというものではない。
 ゲートルを巻いて、遊牧民のお兄ちゃんに連れられて、たっぷり1時間。
腹筋をかなり使うのと、尻は必ず痛くなる。途中から、「降りて歩こうか」とまで思うが、ゾラーさんが平気な顔で、しかも引き馬ではなく自分で手綱を捌いている手前、弱音は吐けない。
 途中の景色は最初はブッシュ、次に山ふところ、最後に草原と、様々に変わる。川を何本も渡るが、水が本当にきれい。
 周囲はイメージの中の白亜紀の景色そのもので、恐竜が歩いていても違和感がない。というより、恐竜がいないのがおかしいと思える風景。
 われわれは引き馬だったが、慣れれば自分で乗馬することもできる。
 因みに、このサイトには金髪の幼児がいた。スキタイ族の遺伝子が隔世で現れることがあるらしい。両親はきれいな黒髪だった。
 因みに、モンゴルの人々は、全体的に日本人に対する好感度が高い。
 歴史的には決して良い関係ばかりではないのだが、人種的な近さによる親近感や、アジアの出世頭としての尊敬の感情を持ってくれている。
 人柄は穏やかで、奥ゆかしい印象を受ける。その分、いわゆる商売的な愛想はあまり期待できない。乗馬の際も、「なにか怒らせただろうか」と思うくらい、無愛想だ。実際には単に恥ずかしがっているだけなのだが。きちんと断ってカメラを向けると、照れながら笑顔を見せてくれる。
 ただ、草原のなかにぽつんと置かれた電気洗濯機が面白かったので、その脇に干された洗濯物といっしょに写真をとったときだけは、『何撮ってんのよ!』とお母さんに大声で怒鳴られた。