おかやま山陽高校が工業教育に熱心な訳

 いま、「工業教育資料」という機関紙の『特色ある学校』という欄の原稿を書いています。
 書きながら、ふと考えました。おかやま山陽高校は、なぜ工業高校であることをやめないのだろうか。
 考えてみると、今の時代、工業高校であり続けること(あるいは、工業学科を設置し続けること)は、決して楽なことではありません。普通科や商業科に比べて、設備も大掛かりになり、お金もかかります。また、今の時代、決してみんながあこがれる人気学科というわけにも、なかなかいきません。特進コースを作って、東大合格者を出したほうが、箔もつくでしょう。
 このように、少子化の今、工業学科を閉鎖する私立高校が多いのも無理はないことなのです。
 それでも、おかやま山陽高校は工業教育を、かたくなに続けています。それはなぜでしょう。
 理由は単純、明快です。
その一つ目、『工業教育が地元で必要とされているから』岡山県南の中西部は、いわずと知れた大工業地帯です。大企業のみならず、中小の関連企業からも、常に人材のニーズはあります。地域で必要とされる人材の育成、これは生石高等女学校時代から一貫して変わらぬ、おかやま山陽高校の基本方針です。
 二つ目。これも単純にして明快です。すなわち、『工業は面白い』。これです。もっと言えば、『ものづくりは面白い』。ものづくりの楽しさ、喜びを知らない人は、本当に人生の半分以上、損をしていると思います。生徒と教員が一緒に、ホカ弁を食べながら、終電帰宅を何日も繰り返しながら、一つの作品をやっと完成させる。コンテストでの結果など、本当のところ、どうでもいいのです。完成の瞬間の達成感、充実感。何ものにも代えがたいのです。
 三つ目。これはちょっとひねくれているかもしれません。すなわち、『他がやらないなら、敢えて、やる』。これです。他の人が「できない」と言うなら、我々がやる価値があります。「わしがやらねば、たれがやる」、平櫛田中先生の心です。もちろん、やるからには堅実に、一生懸命やらなければなりません。
 今年、姉妹校の岡山自動車大学校の入学式で、国内最大手の某自動車メーカーの代表の方がご祝辞を下さいました。その中に、とても印象に残った言葉がありました。その会社のモットーなのだそうですが、ここでご紹介したいと思います。
それは、「愚直に、地道に、徹底的に」、です。
 いい言葉です。ものづくりに必要なエッセンスが、凝縮されたような言葉だと思いませんか。

 おかやま山陽高校では、これにもう一言、付け加えたいと思います。

 すなわち、「愚直に、地道に、徹底的に、且つ、おもしろく」。やはり、生徒です。まだ作品で食っていくわけではない、半人前です。でも、半人前であるならば、半人前の特権を最大限に生かしましょう。
 同じものをつくるなら、おもしろがってやりましょう。それがいいもの、おもしろいものを作るための絶対条件です。
 幸い、昨今、いわゆる『2007年度問題』のおかげで求人状況は回復しています。明るい兆しはあちこちにあります。我が国を支えているのは、やはり、ものづくりなのです。
 ゴーマンかましてよかですかおかやま山陽高校は、未来永劫、工業教育をあきらめません