「指圧でハッピー」好評発売中 〜著作権について考えたこと〜
 すでに何度かこのブログでご紹介した「指圧でハッピー」ですが、おかげさまでじわじわと地域に浸透しつつあるようです。先日は、「笠岡放送で見て気に入ったので」とCDを買いにおかやま山陽高校まで来られた方がいました。また、この間のマイスターフェアでは、特別養護老人ホームに勤務している卒業生が、「レクリエーションのネタに使えそうだ」とビデオを購入してくれました。
 最近、テレビでも地方局オリジナルの体操や歌が流行っていますが、「指圧でハッピー」は、それらと見比べても決して遜色ないと思うのですが、いかがでしょうか。
 ところで、今回のビデオ版制作を通じて、いろいろ新しいことを勉強することが出来ました。その中でも、いちばん興味深く、且つ、ややこしかったのが、著作権をめぐる問題でした。その詳細は、個人的な内容も入ってくるので、具体的なお話はここでは避けます。
 ただ、一つ印象に残ったこととして、著作権というのはCDならCD、ビデオならビデオテープについて設定されているではなく、そこに含まれている「情報」について設定されているのだ、という事実を改めて確認できました。
 「指圧でハッピー」を例にとれば、この歌は、自主制作CD、笠岡放送さんの番組、VHSセルビデオという、様々な『メディア』に載っています。さらに今後は、笠岡放送さん以外の全国のケーブルテレビ各社にも、商品として卸され(販売され)ます。また、RSKの国司アナウンサーさんのラジオでも積極的に流してくださっています。
 CD、VHS、CATV、ラジオ(電波)といった『メディア』は、あくまでも『情報』の『容れ物』、あるいは『乗り物』であり、情報本体ではありません。
 いまから15年以上前、時はまさにバブル絶頂期、一般の視聴者から起業アイディアを募集する番組がありました。審査員である「プランナー」、「プロデューサー」、「コンセプター(いまや文字にするのも恥ずかしい職名ですね)」たちが、面白いと思った企画に対し、賞金をつけるというものでした。最近流行った『マネーの○』の原型のような番組でした。
 そこに、私もあるプランを応募したことがあります。それが、「週刊DATマガジン」という企画でした。コンビニなどに端末を置き、そこに衛星回線を使って音楽データ配信し、顧客は、当時はやっていたDAT(デジタルカセットテープ)を持っていって、好きな曲や番組をダビングして、一曲あるいは一番組ごとの料金を支払う、というものです。毎週1回、DJのトークや、新譜の試聴版を織り交ぜた(ここで広告収入を得る仕組みです)番組形式で新しいコンテンツを配信するので、DATをメディアとする「音の週刊誌」というイメージで、このネーミングにしました。
 いまでは、「この企画の何が新しいの?てか、これってネットでのダウンロードと同じじゃん」で終わりだと思います。しかし、インターネットはおろか、パソコン通信もまだ一般的ではなく、繋いだとしても回線も細かった当時、自宅でのデータダウンロードなどとても考えられなかった時代です。
 実は、この企画には元ネタがあり、当時、あるミュージシャンが、「どんな曲も同じ値段というのは果たして正しいことなのか。つまり、現在、シングルCDは2曲入りで1枚1,000円、アルバムは1枚2,800円という値段設定になっている。これからは、1曲ごとにアーティストが値段設定し、その価値を納得した人にだけ売っていくべきではないか」という話をしていたのを聞いたことがあったのです。これを出発点にして、「では音楽をCDという容れ物から解放するにはどうすればいいか」との発想を形にしたのが、この企画だったのです。
 どうやら1次審査は通過したようで、テレビ局からお電話をいただきました。そして、番組出演に向けての2次審査に行くように言われたのですが、その日にどうしてもはずせない塾のバイトが入っていたので、お断りしました(局の人からは『本当に断るんですか?』と驚かれました。当時、けっこう人気のある番組でしたから)。おそらく、表には出ていなくても、誰かが同じようなことを考えていたでしょうから、番組に出ても、「あの人もそんなことを言ってたよ」で終わった可能性が高かったと思うので、それはそれでいいのです。
 思い出話のようになってしまいましたが、今回、「指圧でハッピー」について、参加してくれた様々な人たちの権利関係を整理しているとき、ふとこの時のことが思い出されたのです。
 時代は変わり、いまや曲だけではなく、あらゆる『情報』が旧来の『容れ物』から自由になりつつあります。キーワードは情報のための高速道路、インターネットです。音楽のみならず、小説、エッセイ、写真、絵画など、あらゆる『情報』が本(紙とインク)、印画紙、キャンバスといった『容れ物』に入れられることなく、電気信号に形を変え、インターネットという『高速道路』を使って世界中を飛び回っています。
 もちろん、このことについて、我々は便利に利用するだけではなく、今までとは違った注意もしなければなりません。昨今のWinnyによる情報流出騒ぎは新しい時代ならではの事故の典型です。おかやま山陽高校でも、新年度、情報システムのセキュリティー向上のための、いろいろな対策を準備中です。
 ともあれ、「指圧でハッピー」、当分は容れ物に入ったままではありますが、世界中とまでは言いませんが、日本中に広がって欲しいと願っています。