オスマンサンコンさんと5人のアフリカからの留学生
 本日、10月28日は文化祭の第一日目です。この日は毎年恒例の、生徒対象の芸術鑑賞または講演会が行われます。
 今年は講演会でした。講師はギニア出身で、タレントでもあるオスマンサンコンさん。「1こ、2こ、サンコーン!」でおなじみのあの方です。ケニアからの留学生M君、K君ももうすぐ卒業です。その記念の意味もこめて、サンコンさんにお願いしました。
 講演前、校長室でお会いしたサンコンさんは、とても気さくな、気持ちのいい人でした。握手した手が凄く暖かかったのが印象的でした。
 講演では、ギニアの民族衣装(正装)に身を包んでの登場。やはりというか、みんなで声を合わせての「1こ、2こ、サンコーン!」から始まりました。そして、遠いギニアで暮らすお母さん(なんと92歳!)への思いや、私たち日本人へのメッセージを語ってくださいました。
 一番印象に残ったのは、サンコンさんが、自分はメッセンジャーなんだ、という思いを強く持たれていることでした。つまり、まず、アフリカ、ギニアの真実を伝えるメッセンジャー。アフリカでは、我々が想像するように、その辺をライオンやキリンが闊歩しているわけではありません。実際、サンコンさんは、日本に来るまでライオンを見たことがなかったそうです。
そして、我々日本人が忘れがちな、日本のすばらしさを伝えてくれるメッセンジャー。日本人は、すばらしい業績を打ち立ててきた、だから、世界の中でもっと自信を持っていいんだ、ということを熱く語ってくださいました。
 そして、人間として大切な、しかしごく基本的な、いろんな約束事を思い出させてくれるメッセンジャー。自然との関係、親子の絆、国家の大切さ、ほんとうにたくさんのメッセージを伝えてくださいました。
 そして、なによりすばらしいのは、サンコンさんは、こういったメッセージを伝えることに、強い責任感を持っておられるということです。大人として、若者に伝えるべきことを伝える責任。ギニア人の代表として、ギニアの、アフリカの現実を伝える責任。
 最近、我々日本人の大人が忘れかけていた、大人が担うべき責任を気づかせてくれた気がします。
 今日の講演会には、もう一つ、趣向がありました。現在、岡山県内にはアフリカからの高校留学生が、全部で5人います。そのうち二人は本校のケニアからのM君とK君です。残り3人は、G高校のセネガルからの男子2人、最後はS高校のセネガルからの女子1人です。彼らが全員、おかやま山陽高校に集合したのです。
 彼らはいわゆる国体要員として日本に来ているわけですが、ここで国体が終わり、気分的にひと段落ついたわけです。で、せっかくアフリカからの先輩、サンコンさんが来られるので、みんな集まってサンコンさんのお話を聞こうというわけです。
 講演終了後、校長室に全員集合し、サンコンさんとの歓談会の始まりです。サンコンさんはご講演の後でお疲れだったと思いますが、いやな顔一つせずにお話をしてくれます。
 サンコンさんは、5人の留学生たちに対して熱心にアドバイスを下さいました。
「アフリカ人であることにプライドを持ちなさい。君たちは、Local Ambassador(小さな大使)、アフリカを代表して来ている立場なんだから。そして、日本人はすばらしい人たちだから、彼らを理解するように努力しなさい。アフリカ人にもいいところがあり、日本人にもいいところがある。日本人のいいところを見つけたら、それをアフリカに持って帰るように心がけなさい。こうしてお互いに理解し、お互いのいいところを取り入れあうことが、世界の平和につながるんだ」、などなど。
 単身日本に乗り込んで、30年以上になるサンコンさんの言葉は熱く、そして、ずっしりと重いです。サンコンさん自身、日本人を理解するため、日本の習慣やマナーを徹底的に学んだのだそうです。その努力には頭が下がります。
 サンコンさんの口調からは、彼が本気で日本とアフリカの掛け橋になろうとしているのだと言うことが伝わってきました。それと同時に、彼の後に続く若者たちにも同じ覚悟と、同じ責任感を持ってほしいとの強い思いも感じられました。わずかな時間でしたが、貴重な交流が出来たのではないでしょうか。
 サンコンさんは、いま、祖国ギニアサンコン小学校を作ろうとしています。そして、その後、今度は老人ホームを作る計画を持っておられます。
 サンコンさんは、実は、日本でホームヘルパー2級の資格を取得されました。その講習を受けたとき、お年寄りがお風呂に入るときに、一番いい顔をしたのに気づいたのだそうです。ところが、ギニアにはお風呂はありません。だから、年老いたサンコンさんのお母さんを始め、ギニアの老人たちをお風呂に入れてあげたいのだそうです。
 サンコンさんは、自分の言葉どおり、日本で発見したいいことを、祖国に持って帰ろうとしています。サンコンさんの計画が上手くいくことを祈りたいと思います。