sanyomomotaro2005-10-19

両棲類は賞味期限が長い? 〜ヘルベンダー全国生中継〜
 今をさかのぼること約1月前、一本の電話がありました。「東京のフジテレビの○○と申しますが…」。内心、「ドキッ!マスコミ?」ちょうど、マスコミ恐怖症が一番強く出ている時期でした。
 話を良く聞いてみると、夏休みごろに一度お電話を下さった方で、ニュースの中の地方の町の自慢の品を紹介するコーナーで、われらが水陸両用車「ヘルベンダー」を紹介したいとの話でした。最初は9月中旬の放映という話だったのですが、諸般の事情で順延になっていたのでした。
 「しかし、なんでまたこんな時期に?いたずら?それにしては手が込んでるな…」疑心暗鬼とはこのことを言うのでしょうね。
水陸両用車を開発した自動車整備部の生徒たちにこの話をすると、えらくノリがよく、「僕らが全国放送で名誉挽回してあげますよ」などと調子のいいことを言ってくれました。
 それから綿密な電話での打ち合わせを経て、10月11日、いよいよ撮影隊がやってきました。メンバーは本社スタッフのHさんと、岡山側のスタッフの方が数名です。
 まずは、本校前の公道での陸上走行シーン。久しぶりに(いや、初めてか?)ヘルベンダーが公道を走ります。思ったよりトルクがあり、そこそこの走りを見せてくれました。運転する自動車整備部顧問の森先生の笑顔が光ります。
 本校での撮影が終了すると、スタッフご一行は、早島に向けて出発しました。
 実は、今回の番組では、途中から、おかやま山陽高校だけではなく、共同開発でご助力いただいた津山の㈱パドックさんも取り上げるとのお話になったのでした。この水陸両用車は、パドックの岡本辰彦社長さんのご協力なくては実現することはなかったでしょう。
 ところが、昨年度末、開発を終えて発表した直後、マスコミ各社により全国に紹介していただいた際、「高校生が開発」という部分は大きく取り上げてくださったのですが、共同開発者であるパドックさんについては、なぜかほとんど取り上げられなかったのです。これは、実は我々が一番心苦しく思っていたところでした。
 しかも、タイミングのいいことに、パドックさんは来年の創立30周年を目前に、この10月14日に新社屋完成・移転を控えていたのでした。これは新店舗移転のいいPRになります。今回、これまでパドックさんにいろいろとご協力を頂いたことへの恩返しが始めて出来たような気持ちでした。
ただし、時間の都合で津山までは行くことが出来ず、水陸両用車のベースとなったバギーカーを早島支店に持ってきていただいての撮影でした。
 続いて、10月15日の生中継に備え、万が一、当日の天候が荒れた場合の予備映像撮りです。午後4時、場所はいつもの高橋川河川敷。そんな中、どこかで見たような妙齢の婦女子がお一方。
 スタッフの方に「あの女性は誰ですか?」とお聞きすると、「あの人が今回のリポーターのフジテレビの高橋アナですよ。あの有名な時代劇俳優(M太郎侍)の娘さんです」。言われてみれば、目元や口元に面影があるような。
 今回の中継はフジテレビスーパーニュースウイークエンドの名物コーナー、「マ〜サのご自慢ジャーニー」のためのもので、彼女がメインキャラクターなのです。
 開発責任者のW君(卒業生)に続いて、高橋アナが乗り込んで、撮影は順調に進みました。最初はギクシャクした進み方でしたが、すぐになれたようで、上手に直進走行してくれました。実は、船でまっすぐ進むのは意外と難しいのです。
 午後5時には撮影が終わり、この日の収録は終了。
 そして、ついに10月15日がやってきました。天候は、残念ながら最悪の土砂降り。これでは河川敷からの生中継は無理です。というわけで、本校自動車実習室からの中継に変更です。
 生中継は午後5時40分過ぎからだったのですが、午後2時過ぎには衛星中継車を連ねて撮影隊が本校に到着しました。それからあとは何度も何度も、鬼のような綿密な打ち合わせ。生の映像に、先日撮っておいた陸上走行映像、河川敷での水上走行映像、そして、パドックさんでの岡本社長のインタビューなど、秒単位で組み合わせ、それを3分40秒の間に収めるのだそうです。予定は未定というのでしょうか、午後5時を過ぎても、次々に変更が加えられます。
 そして、午後5時30分、東京のスタジオとの最終打ち合わせが終わり、内容が確定。CM前の予告スポットがまず放映されます。それが終わると、「はい、次、Bパターン!」と指示が飛び、全員が一瞬で移動。
 生徒と同じつなぎに着替えた高橋アナが実習車の下にもぐりこみます。
 高橋アナが車の下から這い出すシーンから、本番開始。あとは打ち合わせどおり、秒刻みで進行していきます。
 そして、本番終了。わずか3分少々の中継時間が、とても長く感じられました。
 いままで何回か、テレビ中継の現場に立ち会いましたが、今回ほど綿密な打ち合わせと細かな演出をしていたのを見たのは初めてでした。
 このことをHさんに言うと、「外での中継だったら、もっと大まかな演出でも絵になるんだけど、今回は屋内で、閉じた空間での中継だから、細かく決めていないといい絵にならないんですよ」とのこと。プロですねえ、素人にはよくわからないけど。
 放映終了直後、自動車科の職員室では、さっそくVTRを再生して講評会。プロペラシャフトを指すT君の手の動きが怪しいとか、後ろにチラッと山本自動車科長先生が写りこんでいたとか、大爆笑の大騒ぎでした。
 その間、生徒たちは高橋アナのところに行って、ちゃっかり実習服や帽子にサインをもらっていました。あとでそれを知った某先生は歯軋りして悔しがっていました。
 すべてが終わってお礼を兼ねて岡本社長に電話しましたが、岡本社長曰く「それにしても、今回の水陸両用車はえらく長い間、話題になるねえ」。そういえば、そうですねえ。やはり、オオサンショウウオは「ハンザキ」(半分に裂いてもしばらく生きているところからそう呼ばれる)といわれるだけあって、生命力というか、賞味期限が長いのでしょうか。
 ここまできたら、やはり、市販化に向けて、早く二号機を開発しなきゃいけないでしょう。

パドック新HP
http://www.paddock-air.com/