マーチング中国大会 〜本当の『筒いっぱい』〜
 10月16日(日)、マーチングコンテストの中国大会が山口県は岩国市で行われました。
 吹奏楽部保護者会の皆さんが応援に行かれるというので、バスに便乗させていただきました。行きがけは、宮島SAで小休止したり、錦帯橋の脇を通ったりと、ちょっとした観光気分でした。
 車中で中桐先生の即席マーチング講座が行われ、どのような点が祭典対象になるのかなど、興味深いお話が聞けました。簡単に言えば、まず、動きや表現方法が厳しく制限される「パレード」と、それらの自由度が高い「フェスティバル」の2部門に分かれます。また、いずれの部門でも動きと音の両方が審査されるので、どちらか一方だけが優れていても高得点は狙えません。また、規定の範囲内でいかに動きや表現を工夫するかも大きなポイントになります。
 会場に入ったのはお昼過ぎ、小学校の吹奏楽コンクールが終わり、中学生のマーチングが始まる頃でした。中学生とはいえ、レベルは相当なもの。
 本来、非線形な存在である人間が、幾何学的で無機質な動きを目にした時に感動、言い換えれば、生理的な快感を得るというのは、いったいどういうことなのでしょうか。頭の中が持っていかれるような浮遊感が心地いい。
 おかやま山陽高校吹奏楽部が出演するのは午後3時過ぎ。それまでの待ち時間が長かったこと。
 ちなみに、おかやま山陽高校吹奏楽部は、9月18日に津山市で行われた岡山県大会で、「パレード」の部門において演技の最後にチアリーディングを披露するという信じられない「快挙」(「暴挙」とも言う)に出て、観客の度肝を抜いたのでありました。
 しかし、あとで顧問の松本先生に聞いてみると、パレード部門であっても、規定で求められる動きをすべてこなしたあとは何をしても問題ないとのことで、実際、審査員の先生方からは高い評価を頂いたそうです。マーチングの可能性の深さにあらためて感心したものでした。
とは言え、このような「冒険」ともいえる試みを、全国大会出場権がかかった中国大会で本当にやるのか、内心、心配半分、期待半分でした。
そして、ついに、おかやま山陽高校の演技が始まりました。最初は整然と足並みをそろえてのまさに「パレード」。おかやま山陽高校の演技の特徴は、一見自然に見える滑らかな動きにあると思いました。高度な動きをことさら難しそうに見せるのではなく、あえてさりげなくこなしているのがニクイ。
そして、後半、ついに懐かしのプリプリの名曲「ダイヤモンド」に乗って、男子ばかりによるチアリーディングが始まりました。体育会系の吹奏楽部の面目躍如というべきでしょうか。岩国の観客の皆さんはこれを見てどう感じていたのでしょうか。
最後の決めポーズもバッチリ決まり、エンディング。会場からは惜しみない拍手が贈られました。
そして、結果発表。
結論からご報告しますと、見事、金賞受賞でした。しかし、残念ながら、全国出場権は逃してしまいました。
閉会式のあと、会場のロビーで生徒たちが集合しているところにねぎらいに行きました。みんな、本当に悔しそうに泣いていました。彼らがどれだけ今回の中国大会に真剣に取り組んでいたか、痛いほど伝わってきました。
実は、今回のマーチングについては、彼らは、色々と物理的な制約の中で頑張ってきていました。前日も急に予定を変更し、おかやま山陽高校の体験入学で集まった中学生や保護者の方々の前ですばらしい演奏を披露してくれた後、岩国へ出発したのでした。そのほかにも、規定による1年間のコンクール欠場明けという精神的なプレッシャーも強かったでしょう。しかし、彼らはそういうことを一切、言い訳にしませんでした。
そして、これらの制約の中で、彼らは本当にギリギリまで頑張ったと思います。最近、よく「もう、筒いっぱいです」という言い方を耳にします。でも、本当の「筒いっぱい」まで頑張った結果、こういう言葉を使っている人がどれくらいいるでしょうか。
 傍から見ていて、彼らは本当に今回、「筒いっぱい」まで頑張ってくれました。それでも悔しくて涙を流している彼らは、ある意味、本当に謙虚なのだと思います。
帰りのバスの中、保護者の皆さんは、やはり、沈みがちでした。でも、時間という列車は常に進んで行きます。生徒たちだけでなく、応援している我々も、気持ちを切り替えなければなりません。
この後、11月12日には福山ポートプラザでのコンサートも決定しました。また、12月4日には待ちに待った定期演奏会倉敷市民会館で行われます。そして、12月12日からはいよいよ、アメリカ演奏旅行に出かけます。
 週が明けて、校内では吹奏楽部員たちの練習の音色が聴こえます。
これまでの練習は、コンクールで勝つことを目標としたものが中心だったと思います。でも、これからしばらくは、多くの人を楽しませることを目的に演奏をするための練習です。自分が奏でる音楽で多くの人を幸せにするという、誰もがうらやむような経験を、日本のみならず、世界を舞台に経験するのです。
 目指すは、シアトルのミーニーホール、そして、ロスのディズニーランドです。
 最後になりましたが、吹奏楽部の保護者の皆様の心づくしの応援にはいつも頭が下がります。また、今回は保護者会長さんも恒例の「追っかけ」においでくださいました。みなさん、本当に、ありがとうございました、そして、お疲れ様でした。