台風一過 〜リスクマネジメントの観点から〜

 午前11時30分現在、岡山県ではだんだん台風の影響が少なくなってきているようです。いくつかの地域で避難勧告が出されたようですが、皆さんのところでは、被害はなかったでしょうか。被災された方々にはこころからお見舞いを申し上げます。
 さて、昨日、9月6日、おかやま山陽高校は臨時休校となりました。本校の教育要覧には自然災害に伴う臨時休校の規程が載せてあります。もちろん、規程はあくまでも原則であり、最終判断はその都度の状況を考慮しながら行います。結果的に、今回の休校は、この規程の範囲からは外れるものになりました。そこで、今回の判断の根拠と経緯についてお話しておきます。
 今回の判断は、「リスクマネジメント」の観点から行いました。
 リスク(risk)という言葉をご存知だと思います。これを日本語に直すと、どういう言葉になるでしょうか。もし、これを単純に「危険」と訳したとしたら、実は誤りです。辞書にも「危険」とだけ書いてあるものがあるのですが、より正確には「可能性としての危険」「おそれ」あるいは、「潜在的/顕在的な危険度」となるのだそうです。
 たとえば、「東京タワーのてっぺんから飛び降りる『リスク』はどの程度か」という質問はありえません。この質問自体、成り立たないのです。なぜならば、東京タワーのてっぺんから飛び降りることは、「確実に危険(dangerousまたはfatal)」であり、そこに「リスク」という言葉を当てはめるのは間違っているからです。
 これを今回のケースに当てはめてみましょう。
 まず、昨日の時点では、台風は岡山県に近づきつつあり、しかも、その進路はまだ確定していませんでした。東由りのコースを取るか、西寄りのコースを取るか、さらに、どのあたりで速度をあげるか、未確定の要素が多すぎました。その結果、台風による被害の程度が予測できませんでした。もし台風が東よりのコースを取り、しかもスピードがもっと早い段階で上がっていたら、仮に昼前に下校ということにしても、それまでに電車が止まっていたかもしれません。また、自転車での下校にも大きな危険が伴っていたかもしれません。
 つまり、昨日の時点では、登校することに伴う「リスク」が非常に高かったのです。
 一方、今朝の時点で、雨は弱まっていましたが、風はまだまだ強く吹いていました。おそらく、昨日の日中よりも強かったでしょう。しかし、本日、おかやま山陽高校は休校にしませんでした。なぜならば、台風は北寄りのコースを取りながら、スピードをあげて遠ざかりつつあり、まもなく風が弱まることがほぼ確実に予測できたからです。つまり、今朝は、昨日の朝に比べ、台風による被害をうける「リスク」が大幅に低くなっていたからです。あるいは、別の言葉でいえば、今朝登校することに伴う危険の度合いが予測できるようになり、それが許容範囲内であることが判断できたからです。
 もちろん、そうは言っても風は普段よりかなり強いですし、リスクおよび危険はゼロではありません。各生徒が自分自身でリスクを出来るだけ低くする努力をする必要があります。たとえば、自転車の場合、雨が降っていても傘をさすのではなく(これ自体、交通違反ですが)、きちんと雨合羽を着る、車が多く風が吹きさらしになる国道を避ける、などです。
 おかやま山陽高校では、以上のような考え方により、今回の判断を行いました。
 このリスクマネジメントの考え方は、普段の行動にも充分役に立つものです。上で書いたリスクという言葉の定義についてのくだりは、実は、あるリスクマネジメントのコンサルタントの先生からお聞きしたことの受け売りです。
 ものごとを判断するのは本当に難しいものです。でも、何か一つの観点を定める(今回の場合は「リスク」でした)ことにより、なんらかの方針なり答えなりを出すことが出来るようになるようです。