sanyomomotaro2007-02-01

モンゴル紀行 〜やつらの足音のバラード〜 ⑧

 続いて訪問したのが、マンホールチルドレンのための保護施設。いわゆる孤児院である。
 日本のテレビでも何度か紹介されたように、モンゴルには『マンホールチルドレン』と呼ばれる浮浪児がいる。
1992年の資本主義への移行の際、私有財産制への移行についてモンゴル国政府は相応の配慮をしたというが、やはり機転の効く人とそうでない人との間で事態への対処に差が生じたらしい。その結果、やはりというべきか、貧富の差が生まれた。
 そして、貧しい世帯ではアルコール中毒、DVなどの問題が増え、その結果、大量の孤児・浮浪児が発生した。
 彼らは、夏の間はゴミ漁りなどをして暮らすが、零下30度にもなる冬には耐えられないため、市内のマンホールに潜って冬を越している。ウランバートル市内では各家庭に冷水と温水の二つの上水道が引かれているため、マンホール内は冬でもあたたかいのだ。
 モンゴルでは、現在、彼らの第一世代が成年期をむかえ、生活の手段として様々な犯罪予備集団を形成しつつあるのだそうだ。これを憂慮した政府が、これらのマンホールチルドレンを収容し、充分な生活環境と教育を与えるために作った。それがこの孤児院である。
 訪問したのはウランバートル市立の孤児院。ウランバートル市周辺に約10の類似施設があるが、規模はここが最大。収容児童数は幼児から18歳までの約160名。
 授業内容は、卒業後食べていけるようにとの配慮から、靴製造、木工品製造、縫製技術など。現在モンゴルでは日本の剣玉が流行っているそうで、剣玉なども作っているようだった(木工室は責任者が不在で入れなかった)。日本からの私的援助もあるという。
 中には優秀な成績をとり、奨学金を得て大学まで進む子どももいる。
 子どもたちは幼児期の栄養状態の影響からか、同年齢の子どもと比べて一様に小柄だ。
 建物の2,3階が男女それぞれの寮になっている。二段ベッドが設置され、一部屋に8から12名が入る。部屋は清潔で広く明るい。
 食事は食堂に一斉に集まって食べる。子どもたちには係りが分担され、ちょうど食堂係の子どもがテーブルをセッティングしていた。
 テレビはミーティング室に一台のみあった。訪問時はみんなでケーブルテレビのハリーポッターを見ているところだった。
 この施設では飢えや暴力、寒さからは解放されるが、それでも自由をもとめて脱走する児童が後を絶たないそうだ。

 続いて、自動車市場を見学に行った。
 市の中心部から車で10分ほど走ったところに、車の修理工場街がある。たいした道具はなく、ほとんど手作業で修理している。いまだにロシア製の旧型車が重宝されている背景には、道路の悪さ(=故障の多発)と修理環境の低さがある。あまりハイテクの車だと、いざという時に修理部品と技術が手に入らないとのことである。
 そのさらに奥に、自動車市がある。主に日本車と韓国車が売られている。日本車は車検ステッカーが貼られたままのものが多く、出身地を見ていると面白い。中には優良ドライバー顕彰がついたままのものもある。
 ここでは朝一番に、売主が自分で車を持って集合する。早く来たものほど、いい場所が取れる。そして、売り物の車の運転席には売主が座っている。
 ここで一番人気が高いのは日本製の四輪駆動車。時にまっさらの新車があり、驚かされる。ただし、一部はおそらく盗難車両と思われ、ロシアやアフガン(自動車商はアフガン人が多い)経由で持ち込まれたものとのこと。フロントガラスに日本語で「らくだ①」「らくだ②」などとマジックで記入されている。また、○○神宮の「交通安全祈願」のステッカーが張られたままのものもあった。前オーナー氏はむしろ、「盗難除け祈願」のステッカーにするべきだったかも。
 そのさらに奥に、部品市がある。サスペンション、変速ユニットなど、形をとどめているものから、ボルト、ナットのレベルに分解された部品まで、様々なものが露天に並べられている。客はジャンクボックスの中から、ボルトやナットを一本一本、計りながら望みのサイズのものを探していた。ガスケットと思われるが、ナイフを使ってその場で必要な形を切り抜いて売っている店もあった。
 車もここまで直し尽くして最後まで使われれば本望だろう、と感心するほどだった。
 治安は、ここだけはあまり良くなさそうだった。案内してくれたT氏は、「写真を撮る時は、あえて断りを言わないで、さりげなく撮ってください。そして、見つかって文句を言われても無視してください。で、もし、本当にトラブルになったら私を置いて逃げてください」とアドバイスをくれた。しかし、普通に見学する分には、高校生が集団で訪れても大丈夫でしょう、とのことだった。
 なので、レンズを広角に設定して、腰だめに構えてさりげなく撮影した。
 この市場を使ってゼロハンカーのような大会をしたら面白いと思った。

*写真は孤児院に一台しかないテレビでハリーポッターを見る子供たち。